第26章◎所得税は有限だが消費税は無限

税金は大きく分けて「直接税」と「間接税」があります。直接税は、課税される人が国や地方自治体に直接納める税金。その代表は所得税です。間接税は、課税対象者が間接的に支払う税金、具体的には商品の価格などに含まれている税金です。消費税が代表です。

このうち直接税は、課税対象の大きさに限りがあるので、税率には上限が生じます。どんなに高くしても99.99%が限界。100%を超えることはあり得ません。50万円の給料をもらった人から、50万円を超える所得税は徴収できないということです。
しかし間接税は、取ろうと思えばいくらでも取ることができます。消費税の場合、本来の価格に税金を上乗せするわけですから、極端な話、品物の値段以上の税金を課すことも、できない話ではありません。100万円の自動車に200%の消費税をかけることも(税込み価格300万円)にすることも、さらには1000%、5000%にすることも理論上は可能です。

もちろん、消費税率を1000%にするなど現実的ではありませんが、本来の値段以上の税率を課している例が実際にないわけではありません。いい例がタバコです。タバコは2010年10月から大幅な値上げとなりましたが、これはタバコにかかる税金がアップしたためで、タバコ本体の値段が変わったわけではありません。マイルドセブンは1箱410円になりましたが、このうち税金は264.4円です(税負担率64.5%)。言い換えると、タバコ本体の値段は145.6円ということですから、税率は約181.6%ということになります。

イチローや松井が稼いでも妬む人はいない

間接税は、ほかにも酒税やガソリン税などがあります。これらも上げようと思えば無限に上げられます。小学生でも分かる算数ですね。しかし、なぜか理解している大人は少ない。指摘すれば「そうですね」と答えはするのですが……。私には不思議でなりません。

「所得税率を上げよ」という意見を聞きます。確かに、金持ちは税金を多く納めて然るべきですが、国の財政赤字を本気で解消しようと思うなら、税率に上限がある所得税より、最終的には間接税を上げるしかないと思います。具体的には消費税のアップです。
所得税率は、むしろ下げるべきです。私は「金持ちができやすい社会」「金持ちが世襲にならない社会」「金持ちが応分の税を負担する社会」が、経済的にも心情的にも理想的な社会だと信じています。人は、努力と才能で勝ちえたモノに対しては、称賛こそすれ、妬んだりはしません。しかし、親からもらったモノ、運だけで得た利益に対しては嫉妬します。イチロー選手や松井選手が数十億円稼いでも、うらやましく思っても妬む人はいないでしょう。しかし、高級官僚の天下りや、出来の悪い二世経営者には嫉妬するものです。

以上のことから、私は「所得税は低く」「消費税は高く」「相続税はさらに高く」の方向へ社会を導くべきだと考えています。少なくとも、現在の税率は改めるべきでしょう。

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