第27章◎株式市場を活性化させる秘策

リーマンショックで世界の株式市場は冷えみましたが、ここに来てようやく、各国の市況は持ち直してきました。しかし、唯一出遅れているのが日本の市場です。一時は1万1千円台まで回復した日経平均株価も、最近(2010年秋)は9千円台半ばを行ったり来たり。世界的に見ると、まさに日本だけが“一人負け”という有り様なのです。
そのため、個人の金融資産が、現金や預貯金へシフトする傾向を強めています。これでは、私が目の敵にする「退蔵金」が増えるばかり。景気回復は遠のく一方です。

繰り返し述べたように、今この国に必要なのは、カネの流れをよくすることです。「退蔵金」を流通させなければなりません。銀行や郵便局の預貯金を株式市場に導くのも有効な方法の一つ。株式が活発に売買されれば“血流”は格段によくなります。「てこの原理」が働き、金融総資産が増加することは第25章で述べた通り。市場が活況を呈し、株価が上がれば、経済学者や評論家が信奉する「株式時価総額」も高い数値を維持できるでしょう。

では、どうすれば安定的に株式市場へ資産を誘導できるでしょう? 私の答はこうです。
「相続税の課税対象資産を評価する際、株式資産の評価額を過小に評価せよ」
私が「相続税は税率を上げ、控除額は下げるべき」と考えていることは、繰り返し述べてきました。ここに披露するのは、この主張を“逆手”に応用した“秘策”です。

株で資産を残そうとする人を増やす

遺産が現金・預貯金か株かで、評価額に差をつける……具体的には、株の評価額を実勢価格よりずっと低くするのです。評価額が低ければ、それだけ相続税は安くなります。一方、現金や預貯金は相続税が割高になります。となれば、相続税を低くしてあげようと思うのが“親の情”ですから、資産を現金や預貯金ではなく、株で残そうとする人が増えるでしょう。
「実勢価格より低く評価する」ということに違和感をおぼえる人がいるかもしれませんが、実際、相続資産が土地やゴルフ会員権、非上場会社の株式などの場合は、「時価」が明確でないため、実勢価格よりかなり低く評価されています。その分、相続税は低くなりますが、これらは流動性が低い(売却手続きが大変)資産です。たとえ、子供や孫の相続税対策でも、あえて「預金をゴルフ会員権に変えておこう」と考える親はいないでしょう。
しかし、株に変えるのは極めて簡単です(流動性が高い)。今ではインターネットで取り引きできるので、証券会社に出向く必要もなく、全て自宅で売買できてしまいます。

前述した通り、株式の時価総額とは極めてあいまいなものです。遺産を評価する際、株式資産を実勢株価の80%で評価したとしても、大した問題にはならないでしょう。60%でもいいかもしれません。どちらにせよ、預貯金が株式市場に流れれば、株式の時価総額は、流れた金額以上に上がります。カネの流れも活発になり、景気も上向きになるでしょう。

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