第18章◎「医療立国ニッポン」を目指せ

おそらくは、能天気だった自民党政治の失敗でしょう。日本は少子高齢化によって凋落の一途をたどっています。バブルが崩壊した後も、長期的な展望に立った施策を打ち出すことができず、結局は目先の利益誘導によって権力を保持してきました。
そんな政治に飽き飽きした国民は、昨夏(2009年)、民主党政権を誕生させましたが、何か思い切った改革を断行してくれるかと期待していたら、このていたらくです。自民党政治と同じ……いや、それを上回る“バラマキ”の政治手法は、自民党以上にダメです。
もっとも、そういう政権を選択したのは国民ですから「自業自得」かもしれません。外国から「日本人の民度が低い証拠」と言われても仕方ないでしょう。
こんな状況になってしまった以上、急速な国家の立て直しは、非常に難しいと言わざるを得ません。では、今の日本を少しでも成長させる方策はないのでしょうか?

この質問に、私は迷わずこう答えます。「医療立国を目指すべきである」と。
日本は長く「モノづくり」を産業の柱にしてきました。しかし、この分野はアジア各国の台頭が目覚ましく、日本は今後、現状を維持することさえ難しくなると思います。もちろん「立て直し」への努力は必要ですが、一度下降を描き始めた曲線を再び上昇させるのは、そう簡単なことではありません。それゆえ、これからの産業は、これまでとは違う分野から持って来たものを柱にすべきだと考えます。その“最有力候補”が「医療」なのです。

赤字の地方空港を有効活用せよ

日本の医療技術のレベルは、総合力から言ってアジアで断トツの高さです。この技術力を生かさない手はありません。例えば、これからもっともっと増えるであろう、アジアの富裕層に向けて「医療」を売るのです。日本へ高度な医療を受けに来てもらうのです。

そのためには、国を挙げて「医療都市」をつくるべきと考えます。具体的には、全国の閉鎖に追い込まれそうな地方空港の周辺を整備し、医療機関を誘致するのです。都市基盤を整備すれば、道路や病院などの建設需要が生まれますし、海外からの受け入れで空港も有効活用できます。「人間ドッグ」ならリピーターも確保できるでしょうし、観光需要も生まれるはずです。高度な医療技術の開発に伴い、最先端産業の発展も期待できます。さらに、世界から医療を学ぶ者たちを受け入れることで、教育の水準も上がるでしょう。

すでに「医療都市になろう」と事業を始めた地方都市はいくつかありますが、この施策は自治体単位でやることではありません。兆円規模のカネをかけ、国を挙げて取り組むべきプロジェクトです。実際、シンガポールやタイなどでは、国ぐるみで「医療ツーリスト」を迎える取り組みが始まっています。せっかく日本が得意とする分野を世界中に売れるチャンスが来たのに、うかうかしていると、この分野でも他国に先を越されてしまうかもしれません。早急に施策を推進するべきだと思います。

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