第19章◎「金持ちの親」が日本をダメにする

「所得税は公平だが、消費税は逆進性があるので不公平だ」という意見があります。
所得税は累進課税。たくさん稼ぐ人ほど多くの税金が課せられます。一方、消費税は定率課税。購入者がどんな人だろうと、同じ額の消費をすれば、同じ額の税金が課せられます。
例えば、年間の消費金額が百万円だった場合、年収が2百万円のAさんも1千万円のBさんも、ともに同じ額の消費税(5万円)を払うことになります。しかし、これを年収に占める割合で考えると、Aさんの消費税は年収の2.5%に相当するのに対し、Bさんは0.5%にしかなりません。つまり、所得が低い人ほど消費税の負担が大きいことになります。

これが消費税の問題点としてよく指摘される「逆進性」ですが、実際はどうなのでしょう?
第6章で私が指摘した“落とし穴”————「年収が少ない人と生活が苦しい人は必ずしもイコールではない」を思い出して下さい。もう一度あなたの周りを見てみましょう。自分とさほど給料が違わないのに、ぜいたくな暮らしをしている同僚はいませんか? 高級車に乗ったり、海外旅行に毎年行ったり、分不相応に立派なマンションで暮らしている人はいませんか? そうした人たちは、その人自身ではなく、親が金持ちなのではありませんか?
親が金持ちなら、子供も金持ちになる。それが今の日本です。「親が金持ちでなければ、子は金持ちにはなれない」とも言えるでしょう。その一方で、年収は8百万円もあるのに、実に質素な生活をしている人もいます。収入と暮らしぶりは一概に比例しないのです。
だから、税制は「年収」(所得)ではなく「資産」で考える必要があるのです。その観点から見ると「消費税の逆進性」は「必ずしも成立しない」と言えるのではないでしょうか。

所得税率はうんと低くていい

会社にも同じことが言えます。本業の利益がほとんどなくても、50年前に広大な土地を取得した会社は、資産の切り売りだけで十分給料を払えます。一方、差し出す担保がない会社は、銀行から仕入の資金さえ融資してもらえません。これが我が国の現状です。一部の人や会社が資産や利権を一人占めし、退蔵する。一方で「税収が足りないから」と「増税の必要性」を訴える……こんなことで、この国の再興なんてできるわけがありません!

私は増税を否定しているのではありません。むしろ必要だと思っています。しかし、その順序は「相続税→資産課税→消費税」だと考えます。逆に所得税の税率は、うんと低くしていい。努力や才能で高収入を得る者が多くのカネを使ったって、人は羨望するかもしれませんが、嫉妬はしません。才能もなく努力もしない者が、ただ「親が金持ち」というだけで社会的なステータスと高収入を得ることに、矛盾と不満、そして不安を感じるのです。
このことを政治家はだれ一人指摘しませんし、大手マスコミに至っては、資産課税を否定するキャンペーンを行っています。理由は簡単。政治家もマスコミの要人も「親が金持ち」だからです。「相続税の増税」も「資産課税」も自分の不利益になるから言えないのです。
少なくとも私には、そうとしか思えません。

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