第24章◎「3代相続して財産が消えた」は大ウソ

こんな話を聞いたことがありませんか? 「3代相続すると財産がなくなる。相続税でゴッソリ持っていかれるからだ」……果たしてこの話は本当でしょうか?

実は以前、友人の会計士と検証してみたことがあります。子供2人がいる家で、全資産が10億円と仮定しました。そして子供、孫、曾孫とそれぞれ2人ずつの相続を繰り返した時、どれくらい資産が残るか試算したのです(単純計算し、不動産価格の変動などは考慮しません)。その結果、曽孫の代でも、合計6億円は残ることがわかりました。曽孫は8人ですから、単純に割れば、1人当たり7千5百万円ということになります。 もちろん、抱える条件は人それぞれですから、全てこの通りになるとは考えられません。ただ、節税対策や、もっとずる賢い手段を使う人はいるでしょうから、実際には、試算より多い資産を残すケースもあるでしょう。さらに言えば、資産を全て現金で持っている人はいないでしょうから、3代相続する間(数十年)の預貯金の金利などを考慮すると、10億円の資産は、ほとんど減らないことになるかもしれません。

なぜ「3代相続すると財産が消える」などと言われてきたのでしょう? まず、昔は10憶円もの資産がある家は、概して子供が多かったからだと思います。前述の試算では生まれる子供を2人ずつとしたので曽孫は8人ですが、3人ずつなら曽孫は27人です。6億円残っても、27人で分ければ1人あたり約2千2百万円にしかなりません。10憶円の家屋敷が、高々2千万円強のキャッシュに替わったとなれば「相続で財産が無くなった」と感じられたとしても、無理ないのではないでしょうか。

少子化で相続資産が集約される

さらに言うと、子供が多い家には、だいたい1人くらいは、親類縁者からも煙たがられる“放蕩息子”がいたものです。3人の子供とその配偶者を合わせて6人、9人の孫とその配偶者で18人、27人の曽孫とその配偶者で54人……合計すると78人もが相続に絡むわけです。出来の悪い息子が1人いれば、財産を食い潰すのも簡単だったでしょう。

今は事情が違います。核家族化が進み、1家庭あたりの子供の数は、資産の多少に関係なく少なくなりました。一人っ子が増えてきました。もし、夫婦それぞれが一人っ子で、その子供も一人っ子、孫も一人っ子、曽孫も一人っ子だったらどうなるか……。今度は曽孫の代からさかのぼって考えてみると、1人の曽孫が相続するのは両親の資産、両親が相続するのは父方と母方の祖父の資産、祖父母が相続するのは曾祖父母の資産だから、曾祖父母8人の資産が、結果的に1人の曽孫に集約して相続されることになります。ただでさえ、金持ちは金持ちと結婚し、貧乏人は貧乏人としか結婚できない昨今、これでは相続の繰り返しによって、貧富の差は増すばかりです。
私が「相続税を高くせよ」と主張する理由の一つです。

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