第22章◎消費税廃止で景気は回復しない

第19章に書いた通り、私は増税するなら「相続税→資産課税→消費税」の順で上げるべきと考えています。「やるべきことをやってから消費税を上げなさい」ということです。そして上げる時は、これも前に書いた通り「少しずつ段階的に上げるべき」と考えています。
いずれにしろ「最終的には消費税アップは避けられない」という立場です。おそらく、国民の大半もそう思っていることでしょう。税率や時期などで考えの違いはあっても「将来的に消費税のアップが必要」という認識では一致していると思います。

ところが、国民に現実的な認識が広がりつつあるこの期に及んでも、まだ「消費税を無くせば(あるいは下げれば)景気がよくなる」と声高に叫んでいる人々がいることには、呆れるほかありません。これが普通に生活している庶民の声なら、まだ理解もできますが(暮らしに直結する問題ですからね)、そうではなく、政治家や、名の知れた経済学者・経済評論家が臆面もなく主張しているのですから恐れ入ります。景気のメカニズムを、経済の仕組みを、経営の何たるかも知らない連中が「こんなにも多いのか」と驚かされます。

「ずっとバーゲンセール」では売れない

消費税の廃止で、景気が回復するわけありません! 断言します!!
頭の悪そうな政治家が、テレビで「スーパーでもショッピングモールでも、5%オフのバーゲンセールを行えば売上が増える。それと同じだ。消費税を無くせば消費が増え、景気は回復に向かう」と喚いているのを見ると「何をバカなことを!」と腹立たしくなります。本気で言っているのでしょうか? 経済の仕組みを理解しているとは到底思えません。

スーパーのバーゲンは「○月○日から3日間!」といった期限があるから売れるのです。「これからもずっとバーゲン価格」では決して売れません。チラシなどで告知した直後は、お客が店に殺到するかもしれませんが、すぐに沈静化します。考えてみて下さい。これからもずっと安いのなら、急いで買いに行く必要なんてないのですから!
値段を下げて継続的な売上アップが見込めると言うなら、この10年間で値下がりした物が随分あるじゃありませんか。価格が消費税と同じ5%下がった物もたくさんあります。それで売れましたか? 景気が上向きましたか? 少しでもまともな見識を持った人なら「消費税廃止で景気回復」などというバカなことは言わないでしょう。そんな愚にもつかない話をテレビで言うのはやめてもらいたいものです。

第4章で述べたことの繰り返しになりますが、消費が増えるとしたら、消費税が上がる前、いわゆる「駆け込み需要」の時です。だから、むしろ消費税を上げたほうが,景気回復につながるとも言えます。消費税率を半年か1年ごとに少しずつ、段階的に上げることで複数回の「期限」をつくり出し、継続的な駆け込み需要を喚起するのです。この方が「消費税廃止」より、よほど現実的かつ効果的な景気対策だと思いませんか?

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