第21章◎税の仕組みはシンプルにせよ!

今回はサラリーマンの給料にかかる税金について考えてみたいと思います。
我が国の所得税制は、平成になって以降、たびたび変更されてきました。所得金額にいくつか基準を設け、それを超えるごとに税率が高くなる「超過累進課税」を採用していることに変わりはありませんが、その基準や税率が、改定のたびに細かくなってきました。
現在の制度は平成18年(2006年)からですが、課税所得(社会保険料や各種控除を差し引いた収入)が「195万円以下は5%」「195万円超330万円以下は10%」「330万円超695万円以下は20%」……といった具合に6段階の税率に分かれています(最高税率は40%)。
ただ、これだけでは基準額を超えるごとに税額が大幅にアップしてしまうので、控除額を設定し(「195万円超330万円以下は97,500円」「330万円超695万円以下は42,7500円」……)、結果的に基準額を超えた部分のみの税率が変わるように工夫されています。

さらに住民税もあります(前年度の所得を基に算定。原則「所得割10%+均等割4,000円」)。また、サラリーマンの場合は源泉徴収、つまり「税金の先取り」が原則ですから、給与の手取額はますます小さくなります。そのため、せっかく管理職に昇格し、微々たる「管理職手当」が付くようになっても、大半の会社では役付きに残業手当は支給されないので「昇進したら給料の手取りが低くなった」という“逆転現象”も起こり得るのです。

税の算出式は「2次関数」でもいい

パート勤めの女性からも「所得税や夫の配偶者控除の関係から、勤務時間をコントロールして収入を抑えるようにしている」という話を聞きます(合計所得が103万円以下なら、所得税はかからず、配偶者控除を受けられます)。
ここまで読んだだけでも、徴税の仕組みは相当に面倒だと思いませんでしたか? 国民が素直に理解し、納得できるよう、もっとシンプルな仕組みにならないものでしょうか。

せめて所得税の仕組みだけでも、シンプルにすべきです。
現在の所得税の算出式は、要するに「1次関数」……数式で表せば「y=ax」(yは税額、aは税率、xは課税所得)です。しかし、税額を左右する「a」の大きさは、「x」が一定額より大きくなると変わってしまうのですから、結果として算出式が複数あるのと同じになってしまっています。これが、所得税の話を複雑にしている元凶だと私は思います。
それよりも、所得の多い少ないにかかわらず、すべてのケースについて適用でき、しかも累進課税を反映する、シンプルな算出方法1つに改めるべきではないでしょうか。
一案として「2次関数式」も“あり”だと私は考えます。そろばんを使っていた時代なら、数値の二乗を伴う計算は大変だったでしょうが、今はコンピュータで簡単に算出できます。

なお、ところどころで「適用の例外」を設ける必要が出てくるかもしれません。それも極力少なくなるように工夫する必要があるでしょう。

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