第12章◎子供のいない老人を子供たちが支える矛盾

女性の社会進出がずいぶん進みました。私が子供の頃は、外で働いている女性は、まだまだ珍しい存在。特に、結婚した女性は、家に入って主婦になるのが当たり前でした。しかし現在では、結婚した後も外で働き続ける女性は、決して少なくありません。
ただ、結婚後も勤め続ける女性には“関門”が待ち受けています。「妊娠・出産」です。

妊娠・出産となった場合、どうしても仕事を離れざるを得ません。ここで女性は“決断”を迫られます。「退職」か「休職」かです。望ましいのは、もちろん「休職」でしょう。出産して一段落してから元の職場に復帰できるなら、これほどいいことはありません。
ただし、それには、幼い子供を養育する環境が整っている必要があります。自分または夫の親と同居している、近くに保育所がある、そして何よりも夫が理解し協力してくれる、といった条件をクリアしなければなりません。現実問題として、それは非常に難しい。結局「退職」を選ばざるを得ない女性が多いのではないでしょうか。
しかし、いったん退職してしまうと、後年、正社員として再就職することは非常に難しくなります。パート勤めがせいぜい。それを嫌ってなのか、子供を産むこと自体をやめてしまう女性も増えているようです。少子化の進行と、あながち無関係とは思えません。

子供を産まない方がトクをする?

聞くところによると、大卒女子の場合、就職し、子供を産まずに定年まで勤め上げると、その生涯収入は2憶円を超えるそうです。ところが、入社5年目(27歳)で妊娠・出産のために退職した場合、後にパート勤めに出るようになったとしても、生涯収入は3千万円程度にしかならないのだとか。この差、あなたはどう見ますか?
それだけではありません。子供を育てれば、当然ながら養育費がかかります。1人の子供を大学卒業まで育てるには、約2千万円かかるといいます。2人なら4千万円です。妻と子供の収支だけで考えると(生活費など諸々の費用はここでは考えません)、子供を産まなければ2憶円のプラス、子供を2人産めば3千万−4千万=1千万円の赤字(!)です。

まだあります。子供を産んでも産まなくても、老後の生活は等しく「年金」で賄われます。この年金、出所は「現役世代」が納める保険料です。勘違いしている人が多いのですが、年金は世代間互助の制度です。積立貯金ではありません。自分が納めたカネが将来戻ってくるわけではないのです。今働いている人たちが稼いだカネが、今のお年寄りに支給される年金に回っているのです。ということは「子供を産まなかった人の生活も、子供たちが支えている」という構図が成り立ってしまうのです。
子供を産まなければカネをたくさん稼ぐことができ、子供のためにカネを使うこともなく、年を取った後は他人の子が面倒を見てくれる……いつの間にか日本は、こんな矛盾した世の中になってしまっているのです! この状態を解消するにはどうしたらいいか……次章で私の解決策を提示しましょう。

[ 次章へ進む ]
[ 表紙に戻る ]