第3章◎「子供手当」で景気は回復しない

「子供手当」で景気は回復しない

民主党政権の“目玉政策”は、何と言っても「子供手当」でしょう。
ご存じの通り「子供手当」は「中学生までの子供を持つ親に、カネを毎月支給しよう」という“奇策”です。民主党はマニフェストで、子供1人当たり月額2万6千円を掲げていましたが、今年度(平成22年度)は、半額の月額1万3千円でスタートしました。
しかしこの「子供手当」、各方面から批判が続出しています。民主党は来年度(平成23年度)からの満額支給を実現させたいようですが、その財源はあるのか、また外国人への支給の是非など、問題は山積。先行きは不透明と言わざるを得ません。

しかし、私は「もっと重大な欠点がある」と見ています。資金を投入すべき“場所”を間違えているのです。前述したように、経済は「カネの流れ」であり、スムーズに流れてこそ社会は潤うのですが、現行の「子供手当」の制度は、カネの円滑な流れを阻害する危険性をはらんでいます。なぜでしょう?

シャンパンは上から注がなければならない

シャンパンは上から注がなければならない

今回は経済を「グラスツリー」に例えてみます。ご存じでしょうが「グラスツリー」とは、シャンパングラスを何層も積み重ねた、パーティーの定番アトラクションです。一番上のグラスにシャンパンを注ぐと、やがてあふれて下層のグラスに回り、最終的には積み重ねた全てのグラスがシャンパンで満たされる……という仕組みです。

こう書くと簡単そうですが、実際やってみると結構難しい。全てのグラスに行き渡るようにするには、積み方を工夫しなければなりません。リハーサルで何度も試し、積み方を整えてパーティー本番に臨みます。シャンパンをカネの流れとすると、グラスツリーは社会、グラスの積み重ね方は経済政策です。全てにシャンパン(カネ)が行き渡るような積み方(経済政策)が求められるのです。

シャンパン(カネ)は、グラスの中に入っているものは「有効に活用されている」と見ます。上があふれれば、下のグラスを満たして有効活用される————ところが「子供手当」は「下が満杯になっていないから」と、いきなり一番下のグラスにシャンパンを注いでしまいました。するとどうなるか。一番下では、あふれた分を受けるグラスがありませんから、その分は別の器に貯めようとするでしょう。私が問題視する「退蔵金」の発生です。
しかも、下のグラスが満杯になっても、中間層はそうではありません。カラカラに乾いているグラスだってあります。これでは景気浮揚など望むべくもありません。

「子供手当」は少子化対策として打ち出されました。人口の維持は国富に直結しますから、子供を増やす施策が急がれることは間違いありません。しかし「子供手当」は、やり方があまりに“下手”でした。「選挙目当て」としか言いようがない愚策だと私は思います。

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